脳とコンピュータとワーキングメモリ

ここで脳力と記憶力の関係について、パソコンやスマホと比較しつつ考えてみましょう。(あまり興味のないという方は次の表の前後を読み飛ばしてください) 

パソコンやスマホには、メモリ機能を受け持つパーツが何種類か内蔵されていて、大きく次のように3つに分類できます。

コンピュータのパーツの表
MeIC脳とパソコン、スマホの関連

パソコンやスマホのスペック表には「メモリ」という項目がありますが、普通それは②のメインメモリのことです。パソコンの場合、①②はスペースに余裕があれば後で増設できます。

③キャッシュメモリは独立したパーツではなく、CPUに内蔵されている超高速のメモリです。それゆえメモリというよりCPUそのものの機能であるといったほうがいいかもしれません。ちなみにCPUはパソコンやスマホの中で情報処理の中枢を担う最も重要なパーツです。

脳内のワーキングメモリは、機能的にはこのキャッシュメモリとメインメモリに相当すると考えられます。
何か思考している時、脳内では言葉やイメージ、過去の記憶、感情、クオリアなどが絶え間なく明滅し行き交っています。その情報を瞬間的に保持し、脳の情報処理中枢(つまりCPU)の要請に応じて出し入れする機能がワーキングメモリです。
たとえば音楽を聴いている時、その瞬間に聴こえているのはたった一つの音ですが、私たちはそれを曲の流れとして感じます。それは、それまでの「曲の流れ」がワーキングメモリ内に保存されることで可能となります。もちろん読書や会話が成立するのも、その言葉の流れを保持しているワーキングメモリの働きがあってこそのことです。

ワーキングメモリをはじめ記憶力全般が私たちの生活においてとても大切であるように、パソコンやスマホにおいても①~③まですべてのメモリがそれぞれ重要な役割を担っています。
HDDやSSDには、OS(基本ソフト)をはじめ各種アプリケーションソフトや自分で作った大切なデータが保存されています。
メインメモリの性能(容量とスピード)は、同時にたくさんのアプリを立ち上げるなど作業効率を高めることに貢献します。またCPUは必要なデータをHDDやSSDからメインメモリに呼び出して作業するため、これがないとそもそも起動しません。
キャッシュメモリがCPU内部の機能であるように、ワーキングメモリも、記憶力というより思考力や分析力など、脳の情報処理能力そのものであるといえるでしょう。

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