「あの人は頭が良い」というとき、私たちは何を評価しているのでしょう。
学歴、仕事能力、豊富な知識、計算力、IQ…たしかにこれらはみな頭の良さの指標として定着している感があります。
しかし、学歴が低くても、あまり仕事ができなくても、「頭の良い人」はたくさんいます。逆に「高学歴なのに頭が悪い」「仕事はできるのに…」「物知りなのに…」と思われてしまう人も少なくありません。
そもそも学歴は、受験に合格し、卒業したことによって得られる結果であり、頭の良さそのものではありません。体力や経済力、家庭環境などの影響もあります。また、仕事がうまくいかないのは単に得意分野ではないからなのかもしれません。知識量は興味のあるなしで大幅に違ってきます。
学歴や仕事能力などは、頭の良さの結果として現れる一つの目安ではありますが、それに対して計算力や思考力、IQなどは、頭それ自体の性能であるといえるでしょう。記憶力もその一つです。
しかしながら一般に「頭の良い人」といえば、記憶力よりも、思考力やIQなどのほうが評価される傾向にあります。なぜかIQテストの中には記憶力を測るような問題は組み込まれていません。それは、記憶力を単に「覚えられる情報量のレベル」としてのみ捉え、あまりに過小評価しているからだと考えられます。
前述したように記憶力は「頭の良さ・脳力全般」に直結する極めて重要な要素です。とくにワーキングメモリ(詳しくは⇒「ワーキングメモリ」)は、脳の処理能力そのものであるともいえます。