記憶は、その内容や覚え方、保持期間、あるいは学問分野によって、エピソード記憶や意味記憶、感覚記憶、短期記憶、長期記憶など、いくつかに分類できます。
ワーキングメモリは、どちらかというと短期記憶の一つではありますが、じつは記憶という概念を超えたより重要な役割を担っている脳の機能です。
それはある意味、記憶というよりも思考や感情と直結した機能であり、そのスピードや容量は脳力そのものであるといってもいいかもしれません。(詳細は次項「脳とコンピュータとワーキングメモリ」で)
ワーキングメモリの重要性について、当研究所所長・池田義博は著書の中で次のように言及しています。
脳の機能のなかに「ワーキングメモリ」と呼ばれるものがあります。メモリとあるくらいなので記憶の機能の一種には違いないのですが、通常我々が想像する記憶のイメージとは趣が異なります。普段我々が一般的にイメージする記憶力は、大脳辺縁系という場所にある海馬という部位が司令塔となって管理しています。しかし、このワーキングメモリは脳の前頭前野という場所がコントロールしている機能で、単に情報を保持する以上の役割を持っているのです。
『子供の成功は記憶力で決まる』(池田義博 著/朝日新聞出版)
このワーキングメモリは認知機能に非常に大きく関わってくる能力といわれていてアメリカの調査では知能指数、いわゆるIQよりもワーキングメモリの能力のほうが学習成績との因果関係が深いという結果もあるほどです。(中略)
このワーキングメモリ能力の高さがもしかすると頭の回転が速い、もしくは地頭が良い、というときに一番ピッタリくる能力なのかもしれません。
当研究所が開発した「IP記憶法」では、とくにこのワーキングメモリを強化するプログラムに力を入れています。